平成16年第1回定例会(平成16年3月)代表質問

 私は自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団を代表いたしまして、平成16年度予算案並びに関連諸案件について、關市長に質問させていただきます。
 昨年末に第17代大阪市長に就任されました關市長は、施政方針において、「やさしく力強い新生・大阪市」づくりを目指し、時代の要請に応じた改革を実行していくことを明らかにされました。我が会派といたしましても、さきに行われた一般質問で、新市長の施政方針に対し、議員団を挙げて一致協力することをお約束した次第であります。
 三位一体改革が動き出し、地方分権が本格化する中、大阪市においては、市税収入の伸びが期待しがたい上に、行政の高コスト構造を抱え、義務的な経費だけで経常的な財源を使い切ってしまうという財政非常事態とも言うべき状況にあり、さらに、第三セクター問題など積み残された諸課題の解決にも迫られています。このような状況が続けば、市民に閉塞感が漂い、都市の活力が失われてしまいます。今こそ市長が強いリーダーシップを発揮し、大阪を再生させ、本来の魅力を取り戻さなければなりません。これらの諸課題を解決するためには、行政で行うべき事業を厳しく精査し、民間にできることは民間に任せ、職員定数を大幅に削減するなど、行財政の構造改革を強力に推進して、むだを省き、施策の一律縮小ではなく、優先順位を明確にして選択と集中を図らなければ、大阪の未来を輝かしいものにはできないと考えます。以下、このような観点から、幾つかの問題について質問をさせていただきます。
 まず、財政問題についてお尋ねいたします。
 16年度予算では、市税収入がようやく下げどまったものの、依然として 6,000億円台を割り込んでおり、ピークだった8年度と比べますと8割弱の水準でしかありません。また、これまで市税の減少を補ってきた地方財政対策につきましても、厳しい抑制方針をとられた結果、前年度予算と比較しますと、大阪市では地方交付税と臨時財政対策債を合わせて 280億円もの減収になるとのことであります。他方、生活保護費が初めて 2,000億円を突破するなど、扶助費は確実に増加し、公債費もふえてまいります。こうした非常事態とも言うべき厳しい財政状況のもと、大阪市が我が国の中枢都市として発展を続けるとともに、市民が誇れるまちづくりを実現していくためには、大胆かつ着実に改革を進めていく必要があります。
 市長は、さきの一般質問で、この2年間を重点期間と設定して、集中的に財政構造改革に取り組むと答弁されましたが、この危機的な財政状況にあって短期間で改革の成果を出すには、何をどこまでやらなければならないのか、どこまでやれば将来的な展望が見えてくるのか、そうした目標を職員や市民に示す必要があります。目指すべき目標がはっきりしてこそ、改革の機運も高まるのではないでしょうか。
 三位一体改革に伴い、地方財政の枠組みさえもどのように変わるのかわからない中で、将来的な財政収支見通しの予測が難しいことは承知しておりますが、むしろそういう時期であるがゆえに、本市が主張していくべき地方財政制度の方向性や、本市がみずから取り組むべき構造改革の方向性を明らかにするためにも、一定の中期的な収支見通しの作成は不可欠であります。その上で、財政構造改革の工程表とも言うべき行動計画を作成し、これから取り組まなければならない課題や目標を具体的に職員や市民に示すことにより、この重点期間において改革に向けた機運を盛り上げるとともに、着実な成果を上げていくべきであると考えますが、財政構造改革に向けた市長の御所見と決意のほどをお伺いいたします。
 次に、行財政改革についてお尋ねいたします。
 現在、市は新行財政改革計画に基づき、市長部局等において5%、 2,000人以上の職員数削減という目標を掲げて取り組んでおられますが、この財政非常事態のもとでは、一層積極的な取り組みが必要であります。全国的にも抜本的な構造改革の流れの中で、単に効率化の観点だけではなく、規制緩和という観点からも、民間にできることは民間にという、いわゆる「官から民へ」の推進が強く求められています。このような考え方のもと、地方独立行政法人制度や公の施設の管理運営に関する指定管理者制度など、新たな制度も導入されたところであります。こうした制度を積極的に活用し、民の力を大胆に取り入れることにより、これまでの官主体の発想では得られない、柔軟で創意工夫を凝らした市民サービスの向上が図られるものと考えます。
 また、市長も総人件費の1割削減を掲げておられますが、直営施設の民間による管理や事務事業の民間委託化、独立行政法人化などを順次進めることで、例えば職員の定数として1万人程度の削減も視野に入ってくるなど、大幅な行政の効率化も可能ではないかと考えます。さらに、このような改革を推進するに当たっては、職員の意識改革や意思決定の迅速化などを目指した行政システム改革も進めていくべきであります。行政の抜本的な構造改革について、市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、市営バス事業のあり方についてお尋ねいたします。
 14年2月にバス事業についての規制緩和が実施されたことと前後して、各都市では、公営バス事業のあり方について活発に議論が展開され、事業の廃止を計画している都市や、公営を維持しながら民間事業者への管理委託を進める都市もあると聞いております。各都市とも、地方財政が逼迫する中で、人件費を初めとした経費削減の取り組みや民営化の議論がなされておりますが、本市のバス事業においても、他都市と同様、乗車人員の減少が続く中で経営状況は厳しいものとなっており、その状況を十分に勘案した対策を講じることが求められております。こうした観点から、他都市でも議論されている民営化も視野に入れ、あらゆる方策について検討すべきでありますが、当面は、現在進めている管理委託の拡大はもとより、民間の知恵を積極的に取り入れることによって経営の健全化を図ることが急務であると考えます。市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、第三セクター等についてお尋ねいたします。
 先般の市会での議論を経て、第三セクター3社の経営再建問題につきましては、特定調停の成立により、ひとまず基本的な問題の整理に向けて一定の前進を見たところではありますが、言うまでもなく、これで大阪市の抱えている問題がすべて解決されたわけではありません。3社について、今後、決して二次破綻を来さないよう経営監視を徹底することは当然のこととして、3社と同様、厳しい経営状況にある大阪ドームとクリスタ長堀につきましても、さきの決算市会で市長が「早急に再建の方向性を示す」と答弁されたとおり、緊急に対処する必要があります。これら2社は、いずれも債務超過に陥っており、経営改善策を講じてきてはいるものの、14年度末時点で合わせて 864億円に及ぶ借入金を抱え、いわば負の資産としての側面を持っております。
 今日のような事態に立ち至った原因は、民間事業として行うには余りに過大な投資を行ったことにあり、第三セクターとして当初の事業資金の大半が借入金で賄われたため、収益力と債務の返済能力の均衡を欠く経営を続けざるを得なかったものと考えます。そこには、計画責任、株主責任や経営責任に加えて、過剰投資による事業計画を是としてきた金融機関にも、貸し手としての責任が存在することを指摘しておかなければなりません。現在、大阪市は、都市再生に取り組んでいますが、これらの責任の明確化と抜本的な処理方策についての展望なしに、確実かつ着実な発展を望むことはできません。そのためには、市長に対して与党各派が求めた調停関係書類の開示について、先般、一定の司法判断が示されたところではありますが、判断のよりどころとなる情報については積極的に開示するなど、今後は問題を先送りすることなく、速やかに市民の理解を得られる形で解決を図る必要があります。破綻の危機に直面し、将来が憂慮される団体は、この2社に限られるものではありませんが、今後、負の資産の処理に当たって市民の負担を可能な限り小さくするような抜本策を提示することが何よりも重要であり、今後の都市戦略を展開していく上で必要不可欠な前提になると考えますが、市長の御所見をお伺いいたします。
 また、霞町用地土地信託事業、いわゆるフェスティバルゲートにつきましては、過日開催された交通水道委員会における質疑をお聞きしますと、調停が大詰めを迎えているとのことでありますが、議会への報告がない中で、我々が新聞報道等により懸案事項の進捗状況を知るところとなったことは、まことに遺憾であります。我が議員団としては、この間、本件事業の早急な再建を再三にわたって要請してきたところであります。調停案はいまだ示されていないとのことでありますが、いずれにしても、信託法の枠組みの中にあって、大阪市の負担なしで事業の収束を図ることは不可能な構造となっています。かかる破綻事態に至ったことについて、どこに問題があったと認識しておられるのか、また仮に調停が成立した場合、市としては引き続き有効活用を図っていく意向があると聞き及んでおりますが、その際、将来にわたってこれ以上赤字を出さないと言い切れるのか、これらの点について市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、監理団体についてお尋ねいたします。
 現在、見直し計画により団体の統廃合等の取り組みが進められていますが、団体を取り巻く情勢の変化も踏まえたさらなる見直しを大胆に進めることが必要であります。団体の事業内容を精査し、類似性が高い団体を可能な限り統合するなど、思い切った取り組みを行うことにより、将来的に団体数を現行の3分の1程度に圧縮することも可能ではないかと考えます。この目標を目指して最大限の取り組みが行われるよう求めたいと思います。
 また、経営状況の厳しい団体については、課題の解決に早急に取り組む必要があります。さらに、監理団体に対する市の委託についても、我が会派がかねてから求めているように、委託料の3割削減を目指して適正化に取り組み、本市経費負担の軽減を図るべきであり、特に再委託については、必要性・妥当性を精査し、厳しく見直すべきであります。人材活用の面では、本市派遣職員の必要性を明確にしつつ、必要に応じて民間から幅広く人材の登用を図るべきであり、OB職員を活用する場合は適材適所の人員配置を行い、より効率性の高い運営を実現していくべきであると考えます。監理団体に対するこうした諸課題への取り組みについて、市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、地方3公社についてお尋ねいたします。
 これまで、大阪市土地開発公社は事業用地の先行取得を、大阪市道路公社は公共駐車場や有料道路の建設・管理運営を、大阪市住宅供給公社は市民への良質な住宅の供給を、それぞれ主な業務内容として事業を行ってまいりました。これら3公社は、大阪市の機能や役割を補完・代替しながら一定の役割を果たし、社会基盤の充実・整備に寄与してきたと考えますが、各社の設立された時点に比べて時代背景は大きく変化しています。社会基盤の整備が進むとともに、さまざまな分野に民間事業者が進出しており、その力を活用することによって一層効率的かつ弾力的な事業執行を図ることができる分野がふえています。必ずしもこれまでと同じように行政や公社が事業を所管し続ける必要がなくなってきている分野もあるのではないでしょうか。社会状況の変化により、現状にそぐわなくなったり、その意義が失われ、実情に合わなくなっているものについては、事業のあり方を改めて見直し、必要に応じて業務の縮小・撤退を図るとともに、大阪市として、行政みずからが手がける必要の有無を精査し、より効率的かつ柔軟な事業運営が図られるよう検討し、今後の方向性を指し示す時期に来ているのではないかと考えますが、市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、教育問題について、習熟度別授業の実施と教員の資質向上という点に絞ってお尋ねいたします。
 市長は、公約で習熟度別授業の実施を掲げておられます。この方式は、子供が自分に合ったグループを選び、興味・関心を持って取り組むことができ、学ぶ楽しさがやる気や挑戦につながり、学力向上に効果があると考えますが、より効果あるものとするためには、保護者に十分な理解を得ること、さらに教職員の共通理解や指導体制、指導方法、効果測定などの対策を確かなものにすることが不可欠であります。「せいては事をし損じる」ということもあります。決して絵にかいたもちにならないためにも、課題をクリアしながら段階的に実施するなどの配慮が必要であります。また、習熟度別授業を実施するため、非常勤嘱託や国の加配を活用すると聞いておりますが、配置に当たっては、現在配置されている加配教員も含め、全体として適正に行っていただきたいと考えます。これらの点を踏まえて、今後、習熟度別授業にどのように取り組んでいこうと考えておられるのか、御見解をお伺いいたします。
 また、学校には集団生活の一面もあり、子供たちはその中で切磋琢磨して鍛えられ、成長していくものであります。したがって、たとえ学級の人数が40人、50人であっても「任せておけ」という気概と力量を持つ教員が必要であり、その意味からも、教員の資質向上をいかにして図っていくのかが求められています。さらに、教育委員会には、教員の資質向上を進めるに当たって、ぜひとも校長への権限強化とバックアップの視点を忘れないでいただきたいと思います。具体には、「授業がうまく成立していない」、「勤務態度が不適切である」といった問題教員を学校現場から退場させる権限を校長に与えるとともに、免職等の断固たる対応も行っていくべきであります。
 また、頑張っている教員とそうでない教員との間に、給与面、人事面において差をつけることも必要であり、給与等の処遇とも連動した教員評価制度を教員全体の資質向上方策として確立すべきであると考えます。教員一人一人がみずからの教育目標を持ち、着実に実践を進めることは重要でありますが、教員はこれまで、子供を評価することはあっても、みずからが評価されることは余りなかったのではないかと思います。また、評価とは、評価される側はもちろんのこと、評価する側の見識も問われるものであります。そのため教育委員会は、客観的な評価基準を示すことはもとより、校長の評価能力の向上を図るため、支援方策を早急に実施し、校長へのバックアップを図るべきであると考えます。こうしたことが評価者である校長の権限強化にもつながり、管理職と教員との間に世間並みの適正な関係も構築できるものと考えますが、御見解をお伺いいたします。
 次に、芸術文化の振興についてお尋ねいたします。
 国際化が進展し、都市と都市とがその魅力を競い合う時代にあっては、その都市に住む人々の心がいかに豊かで活力に満ちあふれているか、いわば都市の文化の熟成といったことが大きな要素になってまいります。大阪には、市民による自治・自立の伝統があり、市民みずからがまちの発展を支えてきた歴史があります。芸術文化の振興についても、この市民のパワーを生かし、地域の力として結集することが重要であり、市民が芸術文化に親しみ、芸術家と連携して芸術文化を支えていく中で芸術文化創造環境の整備が図られるよう、施策を推進していく必要があります。今回の芸術文化振興条例案には、芸術文化の振興に市民が参加しつつ、芸術文化の発展に寄与するとうたわれておりますが、これが理念倒れとならないよう、市民が芸術文化を支えていくという考え方を文化振興施策の中に十分織り込むとともに、その運用を効果的かつ適正に行っていただきたいと考えますが、市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、都市再生についてお尋ねいたします。
 都市再生を推進するには、具体的でわかりやすいイメージを打ち出すことが大切であり、そのためには大阪のシンボルである御堂筋、中之島、ベイエリアを施策の中心として積極的に打ち出すことが最も有効ではないでしょうか。まず、御堂筋については、ビジネス一辺倒の空間から、カフェテリアができるなど人が集う出会いの空間に変わりつつあります。御堂筋には既に十分なハードやソフトの蓄積があり、市民や企業と協力して新たな創意工夫を加えることで大きな変容を遂げられることを情報発信すべきであります。
 次に、中之島西部地区では、大規模業務ビルや大阪大学等の学術交流施設に加えて、国立国際美術館が建設されるなど、都市再生の重要拠点として整備が進んでいます。さらに、中之島新線の着工によって地区の開発ポテンシャルが高まりつつあり、豊かな水辺と緑の環境を広くPRして民間開発を誘導することで、国際都市大阪の中心にふさわしいまちにしていくことができるものと考えます。
 ベイエリア、特に咲洲コスモスクエア地区には、既に高度な都市機能が集積しているとともに、まとまった開発可能な用地があり、ここに都市再生を目指す上で重要な企業や都市機能の集積を進めていくべきであると考えます。また、OTS線等の鉄道料金が大幅に低減されれば、まちづくりが大いに促進されると考えられます。整理すべき課題はありますが、16年度のできるだけ早期の実現に向け取り組んでいただきたいと考えます。
 さらに、こうした取り組みに加えて、広く内外の投資を呼び込むための思い切った誘致策や積極的なシティープロモーションも必要であります。また、国の都市再生基本方針には、災害に強い都市構造の形成、密集市街地の整備が重点分野として掲げられております。鶴橋地区では、去る2月15日、老朽化施設の更新、防災のまちづくり、商業の活性化を目指して再開発準備組合が設立されましたが、地域の魅力を生かしつつ、みずからの知恵や資金を投入して再生を目指す地元の動きを、大阪市としても全庁的・全面的に支援すべきであると考えます。都市再生に関するこれらの点について、市長の御所見をお伺いいたします。
 また、都市再生には地下鉄網の整備も重要であります。大阪市の地下鉄は、我が国初の公営地下鉄として着実に路線整備が進められ、都市基盤としてまちの骨格を形成するとともに、市民の大切な足として重要な役割を果たし、市の発展に大きく寄与してきました。しかし、 100キロを超える地下鉄網も、大阪市がお手本としてきたパリの非常に密な地下鉄網と比較すれば、まだまだ未成熟であり、今後、大阪市が西日本の中枢都市として再生を図っていくためには、さらなる充実がぜひとも必要であると考えます。現在、第8号線の工事が進められておりますが、今里以南についてはまだ着工が決定しておりません。第8号線も、今里までの整備では未完成であり、全線の整備によって初めて東部地域の発展が期待できると思います。大阪市の発展に向けて地下鉄網の拡充を図るため、一日も早く第8号線を今里から湯里六丁目まで整備するべきだと考えますが、市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、新産業の創造と大阪経済の活性化についてお尋ねいたします。
 都市再生を実現し、大阪経済が持続的に発展していくためには、将来を展望した大きな仕掛けが不可欠であります。都市再生プログラムでも重点産業分野に位置づけられているロボットテクノロジーやITなど、最先端技術を活用した新しいビジネスの創造と産業の育成・振興を図っていくことがとりわけ重要であると考えます。
 まず、ロボットテクノロジー分野については、関西ではATR・国際電気通信基礎技術研究所を初めとする研究機関でロボットに関する高水準の研究が行われ、大きな実績を上げています。このような研究成果を大阪の企業が有効に活用し、実用化につなげる仕組みを構築するため、積極的な取り組みを推進し、大阪が中心となって我が国のロボット産業をリードしていかなければならないと考えます。
 IT分野については、いつでも、どこでも、だれでも、通信端末機器を用いて、さまざまな情報を便利に使うことができるユビキタスネットワーク社会を目指して、産学官連携による協議会が組織され、御堂筋周辺で先進的ITを活用した実証実験が行われていますが、協議会の活動は大手企業が中心であり、中小企業の参画は少ないと思います。中小企業が多い大阪市にとって、今後、IT産業の活性化を図るには、中小企業の発展・活躍を促すことが重要であります。また、ユビキタスネットワーク社会は、豊かな市民生活や利便性の高いまちづくりをサポートするものでありますが、一般市民にその周知が十分でないと考えます。今後、ロボットテクノロジーやITの分野についてどのように進めていかれるのか、市長の御所見をお伺いいたします。
 また、このような新産業の創造につながる新たな事業展開に意欲的に取り組もうとする中小企業や、厳しい経済状況の中で地域の商業やものづくりの現場で日々努力されている中小企業を、資金面から支援することも重要であります。このため、無担保・無保証人型の融資の充実など機動的な金融セーフティーネット対策を講じるとともに、ローン担保証券融資(CLO)など資金調達方法を多様化する新たな金融制度を拡充するなど、地域経済の再生の担い手として大きな役割を有している中小企業の活力を引き出すことが必要と考えますが、あわせて市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、雇用施策についてお尋ねいたします。
 このたび、市長を本部長とする大阪市雇用施策推進本部において、16年度から19年度までに5万人の雇用創出を目指す取り組みがまとめられたところでありますが、これまで申し上げたような都市再生や大阪経済の活性化に向けての取り組みは、雇用の創出にもつながるものであり、厳しい雇用情勢を改善するため、市長を先頭にしっかり取り組んでいただきたいと考えます。施策の推進に当たって目標を設定することは必要ですが、さらに大切なのは、この5万人の雇用創出の成果を市民にわかるようにすることであります。必ず5万人の雇用創出を図り、市民に示すという市長の決意のほどをお伺いいたします。
 また、5万人の雇用創出とあわせて、雇用の安定に向けた取り組みとして、昨年の市会で、市民に身近な情報発信や職業相談の充実を図るべきであること、また無料職業紹介も視野に入れる必要があることを指摘いたしました。昨年6月に職業安定法が改正され、大阪市においても無料職業紹介事業を実施するとのことでありますが、とりわけ厳しい大阪の雇用情勢を改善するには、国との二重行政を避けつつ、市としても積極的に取り組む必要があると考えます。市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、ホームレス対策についてお尋ねいたします。
 昨年7月に策定された国の「ホームレスの自立の支援等に関する基本方針」に基づき、本市においても実施計画を策定すると聞いております。実施計画案では、自立支援センターをホームレスの自立を総合的に支援するための中核施設として位置づけ、その拡充を図ることとされています。自立支援センターは、地域住民の方々の理解や協力を得ながら、現在、市内3カ所、総定員 280人で運営されており、自立支援に一定の成果を上げてはいるものの、市内のホームレス約 6,600人を対象とするためには、入所定員を大幅にふやす必要があります。また、野宿の主たる原因である失業状態から脱却するには、本人の努力を促しつつ、自立への意志・意欲を高めることによって就労に結びつけるとともに、就労後に再び野宿とならないようきめ細かく支援するなど、強力に施策を推進することが必要であります。
 一方、市内の公共施設に目をやりますと、大規模公園だけでなく小規模公園に至るまで、まだまだテント・小屋がけが目につき、地域住民の方々からは、「公共施設の利用が阻害されている」とか「地域環境が悪化している」という声が寄せられております。快適なまちに住みたいという地域住民の方々の視点に立って、公共施設の利用の適正化を迅速に進めていくことも重要であります。市長も公約とされているように、重点施策の一つとして、在任期間中にもホームレス問題の解決にめどをつけていただきたいと考えますが、市長の御所見をお伺いいたします。
 次に、同和行政についてお尋ねいたします。
 14年3月の地対財特法の失効に伴い、大阪市では、それまで実施していた同和対策事業について、一部事業に経過措置を講じながら基本的に廃止し、なお残された課題については一般施策により対応しているとのことであります。我が議員団はこれまで、一般施策での対応に当たっては、人権に名をかりて特別対策の永続化を図るようなことがあってはならず、市民の理解が得られるよう施策の透明性を確保すべきこと、また円滑な収束に向けて経過措置を講じた事業については、14年3月の予算市会で付した附帯決議を十分踏まえて厳正な進行管理を行い、確実に収束すべきことをたびたび指摘したところであります。地対財特法が失効して間もなく2年が経過しようとしていますが、経過措置事業については、奨学金の一部を除き、来年度中には収束することとされております。
 また、附帯決議で指摘した市営住宅の入居のあり方や芦原病院の抜本的な経営改善、共同浴場の自主経営確立、未利用地の有効活用についても、一定取り組みを進めているようではありますが、進捗のおくれているものもあると聞いております。さらに、青少年会館や人権文化センター等の施設についても、行財政改革の趣旨を踏まえ、より一層適正かつ効率的な運営を図り、地方自治法改正の趣旨に沿って抜本的な管理運営の改善を図るべきであります。経過措置事業の収束や施設運営の効率化などに向けて、早急に取り組みを進めるべきであると考えますが、市長の決意のほどをお伺いいたします。
 次に、新しい総合計画についてお尋ねいたします。
 新しい総合計画の基本構想骨子案にある「アジア交流圏のネットワーク拠点として活気あふれる大阪」、「人が集まり、育ち、新しいものを生み出す大阪」、「暮らしたい、訪れたい、魅力あふれる大阪」という3つの柱は、いずれも欠かせない要素ですが、大阪をよりよい方向に変えるためには、まちの主体である市民や企業がともに取り組むことが不可欠であり、もっとわかりやすく、一言で市民にアピールするため、市民も参加して幅広く知恵を集め、みんなが共感できるようなキャッチフレーズを選んではどうでしょうか。また、総合計画にあわせて策定する地域別計画は、市民が主体となって、安心できる魅力ある地域づくりに取り組む機運を盛り上げるための活動指針となるよう、積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、市長の御所見をお伺いいたします。
 最後に、新しい都市経営システムについてお尋ねいたします。
 地方分権の進展に伴い、地方自治体は、みずからの判断で施策を展開し、その結果に対してみずから責任を負う時代を迎えております。その一方で、限られた財源の有効活用という観点から施策の選択と集中が求められており、市長は、民間の経営手法を取り入れ、トップダウンによる全庁的な観点から迅速な意思決定を行う、新しい都市経営システムを構築すると表明しておられます。しかし、民間では、かなり以前から血の出るようなリストラを進めるとともに、常に顧客のニーズを的確に把握し、迅速に対応するべく、組織体制や仕事のあり方を変化させており、時期を失すれば倒産するという危機意識を持って企業経営を行っています。もはや経済が右肩上がりで市税収入の増加が期待できる時代ではありません。社会経済環境が激変してから久しく、本気で施策の選択と集中を図らなければならない状況にあります。市長は、これまでのシステムに対して強い危機意識を持ち、新しい都市経営システムの構築を公約に掲げたものと思います。その趣旨には我々も賛同するものでありますが、それが実効性のない、いわゆる小田原評定のような、いわば「会議のための会議」になってしまっては意味がありません。新しいシステムの実効性を確保するとともに、市政運営の基本的な考え方を早急に示すべきであると考えますが、市長の御所見をお伺いいたします。
 以上、各般にわたり質問してまいりました。市長みずからが先頭に立って集中的な施策を行い、都市としての魅力を取り戻すことが、市民の誇れるまちづくり、市民に愛される大阪の実現につながると考えております。關市長の明確な御答弁をお願いいたしまして、自由民主党・市民クラブ大阪市会議員団を代表いたしましての私の質問を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

關淳一市長

 ただいまの黒田議員の御質問に対しまして、お答えを申し上げます。
 まず、財政問題についてでございますが、市税収入はようやく下げどまり感が見られたとはいえ、今後も低水準で推移すると見込まれ、地方財政対策も大幅に削減されるなど、本市の財政は非常事態とも言うべき状況にあります。このような中、大阪市の一層の発展を目指すためには、時代が要請する改革を着実に進めていく必要があり、このため、「持続可能な都市づくり」という視点に立ち、一層の歳出削減と行財政の効率化を目指し、この2年間を重点期間と設定して財政構造改革に取り組んでまいります。
 16年度予算における具体的な取り組みとしましては、公共事業で、選択と集中による事業の重点化や公共工事コストのさらなる3%縮減などにより、1割を超える大幅な削減を行いますほか、人件費につきましては、給料カットの延長や退職手当の支給月数引き下げに加え、職員数を約 400人見直すこととしております。さらに、民間活力の活用や分権型予算編成システムを導入するなど、財政構造改革を積極的に進めることといたしております。また、明確な戦略を持って迅速な意思決定と大胆な実行を図るため、都市経営会議を設置するなど、新しい都市経営システムを構築してまいります。
 今後、改革を進めるに当たっては、御指摘のように明確な目標を持って進めていくことが重要であり、三位一体改革など大きな不確定要素はございますが、現在求められている財政健全化に向けた取り組みや、地方税財政制度の改革に向けた国への提言を行うためには、一定の中期的な財政収支見通しを作成し、目指すべき目標を明らかにする必要があると私も認識いたしております。こうした考え方のもと、具体的な課題と見直しの工程についての全体像を示した行動計画を、都市経営会議で議論を行い、秋までには策定いたしますとともに、強いリーダーシップを発揮して、市民や職員に明確に示しながら構造改革を進めてまいる所存であります。
 行財政改革についてでございますが、現在の厳しい財政状況のもとでも、市民サービスを向上させ、持続可能な都市づくりを着実に進めるためには、この4年間で総人件費の1割削減を図るなど、行財政運営の効率化を一層進めてまいりますとともに、新行財政改革計画に基づき、行財政運営全般を抜本的に見詰め直す観点から、さらなる取り組みを行ってまいります。事務事業の運営に当たりましては、従来、行政が担っていた分野においても、行政の役割・責任を踏まえつつ、民間部門の成熟によりその対応が十分可能なものについては、民間の力を積極的に活用してまいります。また、既存の施策・事業を一つ一つ根本から洗い直し、徹底的な事務事業の再構築を実行し、地方独立行政法人制度や指定管理者制度など、新たな制度についても検討を行うとともに、これまで当然とされていた行財政運営におけるさまざまな仕組みややり方を、時代の変化を見据えて大胆に変更していく必要があると考えております。今後とも、簡素で効率的な行政運営と柔軟で自律的な行政運営システムの構築に向け、議員御指摘の趣旨を含め、さまざまな観点から検討しながら、行財政改革を積極的に進めていく所存でございます。
 市営バス事業のあり方についてでございますが、本市では、従来から市バス・地下鉄・ニュートラムが一体となった市営交通ネットワークにより、市民・利用者に利便性の高い輸送サービスを提供してまいりました。バス事業は、行政施策の一環として環境対策やバリアフリー化にも先駆的に取り組んでおりますとともに、採算性の確保が困難であっても、行政的見地から地域住民の移動を確保するため運行を行っているものもございます。しかし、乗車人員の減少が続く中、その経営状況は一層厳しさを増していることから、数度にわたる大胆な効率化に取り組んでまいり、現在も、交通局経営改革計画に基づき、新たに管理委託の手法も取り入れるなど、懸命にコスト削減に努めているところでございます。今後とも、市バスが市民ニーズを十分に反映しながら、公共交通機関としての使命を果たしてまいりますため、民間の経営感覚も積極的に取り入れながら、当面、管理委託の拡大を初めとしたさまざまなコスト削減策に取り組むことにより、さらなる経営の健全化に努めてまいります。
 第三セクターの経営再建問題についてでございますが、過日、特定調停を経て再建に着手した3社の処理に際しましては、本市の負担のあり方について、議会から大変厳しい御指摘をいただいたところでございます。残る課題である大阪ドームとクリスタ長堀両社の管理・運営する施設については、大阪ドームが近畿圏随一の全天候型の多目的ドームを有し、スポーツ・文化等の大規模催事に不可欠な都市インフラとして、また地区開発の拠点施設として、年間 400万人近い集客力を発揮し、地域の活性化に貢献しており、クリスタ長堀は、都市計画決定された駐車場及び地下歩道を有する地下街を擁し、周辺地区との地下交通ネットワークの形成や地域活性化に貢献する施設として重要な役割を担うなど、極めて公共性の高い施設であります。しかしながら、両社とも現状のまま経営を継続することは非常に困難であり、これまでも専門家の協力を得て、各施設の機能存続を図る最善の手法について検討を重ねてまいりましたが、抜本策の策定が急務となっております。また、本市が喫緊の課題である都市再生に全力を傾けるためにも、まずこの問題の解決が重要であると認識いたしております。
 さらに、再建策の妥当性の説明責任を果たすために必要な情報開示についても、今後、積極的に対応してまいりたいと考えております。現在のところ、過大債務の問題に加え、債権者の構成が多岐にわたっていることなどから、再建スキームを描くのに時間を要し、成案を得るに至っておりませんが、今後早急に、本市を含む各関係者の責任に応じた負担の公平と協力のもとで、市民の理解が得られる抜本的再建策をお示しできるよう全力で取り組んでまいります。
 霞町用地土地信託事業についてでございますが、現時点で裁判所から調停案は示されておりませんが、本日午後の調停は、今後の進展において重要な期日になると考えております。事業を現状のまま継続すると赤字の拡大が懸念されますことから、調停案が示され次第、内容を十分吟味した上で受諾の是非について早急に結論を出し、議会にお諮りしたいと考えております。かかる事態に至ったのは、一義的には受託者である信託銀行が経営した結果でありますが、委託者として事業の再生を図れなかったことについて、極めて遺憾に存じております。仮に調停が成立した場合には、地域活性化の核として資産を有効活用してまいりたいと考えております。議員の御指摘を真摯に受けとめ、堅実な手法で有効活用を行えるよう、私みずからも指導・監督してまいる所存でございます。
 監理団体についてでございますが、現在、平成17年度を計画期間とする見直し計画により統廃合等に取り組んでおり、その速やかな進捗を図るとともに、団体が行う事業の類似性等を精査・勘案して、積極的な見直しに取り組んでまいりたいと考えております。また、経営状況の厳しい団体につきましては、経営実態を的確に把握し、具体的な経営改善方策を立案・実施させるなど指導・監督に努めるとともに、監理団体への委託につきましては、再委託を含めた見直しを継続的に実施し、委託料の縮減に取り組むことにより、本市負担経費の削減に努めてまいります。さらに、団体運営に当たりましては、本市が職員を派遣する必要性を精査するとともに、団体の性格や業務内容に応じた民間人材の登用や、本市OB職員を活用するに当たっては、経験や資質を生かした適切な人員配置に努めるよう指導してまいりたいと考えております。監理団体におけるこれらの課題につきましては、議員の御指摘を踏まえまして、平成16年度におきまして基本的な方向性や目標を定め、団体数や委託料の縮減を図るための取り組みを進めてまいる所存であります。
 地方3公社についてでございますが、議員御指摘のように、設立から時間も経過し、社会経済情勢の変化や長引く景気低迷に伴い、事業の前提となる社会の諸条件も変化し、時代のニーズに対応した事業のあり方を検討する時期に来ております。
 土地開発公社は、昭和48年に設立され、先行取得のメリットを生かしながら公共用地の取得等に努め、市域の秩序ある整備に寄与してまいりましたが、バブル崩壊以降の地価が下落し続ける局面では、先行取得の経済的メリットが失われ、また事業化されるまでの間、長期にわたって保有している用地もあり、取得に要した資金に係る利子の累積が将来の大阪市の負担増を招くなどの課題もございます。今後、先行取得の必要性や事業量の減少も踏まえ、業務内容や規模に見合った組織機構のあり方について検討を進めてまいります。
 道路公社は、平成6年に設立され、駐車場や有料道路の建設、管理運営等の業務を行っております。長引く景気の低迷などにより施設利用が低迷し、本市の債務保証を得て資金を調達するなど厳しい経営状況にあります。法人の性格上、道路公社の負債は最終的に大阪市に引き継がれる仕組みとなっておりますが、その債務を圧縮するため、より一層の経費削減や利用促進に努めるのはもちろんのこと、今後の公社のあり方について抜本的に検討を進めてまいります。
 住宅供給公社は、昭和26年設立の住宅協会を引き継ぎ、平成7年には住宅整備公社と統合するなど、組織改革を図ってきたところでございます。今後は、民間住宅市場の状況等を踏まえ、民間にもできる新たな用地を取得しての分譲住宅事業については見直しを行うとともに、市民に対する住まいの相談や情報提供、市営住宅の維持管理など、本市住宅施策の推進に必要な業務に、より重点を置いた業務展開を図ってまいります。今後とも、議員御指摘の趣旨を踏まえ、時代に即応した効率的な業務推進体制の構築に向けて努力してまいります。
 教育問題につきましては、後刻、教育委員会よりお答え申し上げます。
 芸術文化の振興についてでございますが、大阪がこれまで築いてきた歴史的・文化的伝統を尊重しつつ、発展させながら、市民の方々が生活の中で身近に芸術文化を楽しめ、また自主的かつ創造的な芸術活動が活発に行われる芸術文化都市を目指してまいります。議員御指摘のように、効果的に施策を行う上で、芸術家とともに市民が芸術文化を支えるという条例の理念を具体化していく必要があります。そのため、施策の対象となる範囲や手法などについて検討し、実施要領を定めてまいります。また、施策の成果についても、専門家の意見を聞くなど評価制度の整備も必要であると考えておりまして、今後、一層運用面の適正を期してまいります。これまで以上に市民及び芸術家の自主性を尊重するとともに、連携を図り、芸術文化振興のための多様な施策を総合的かつ強力に推進してまいります。
 都市再生の推進についてでございますが、これまで大阪に蓄積されてきたポテンシャルを活用するとともに、新たな都市魅力を創造し、活発な経済活動が行われる都市へ再生していくことが喫緊の課題となっております。
 まず、大阪のシンボルである御堂筋、中之島につきましては、オープンフェスタや光のルネサンスのような創意工夫あふれる活動、花と緑、光と水を生かした施策を積み重ね、にぎわい集客機能の向上に努めてまいります。特に、中之島西部地区では、都心の貴重な水辺を生かした環境整備を進めるとともに、鉄道整備を契機に民間開発の促進を図り、国際都市大阪の顔となるまちを目指してまいります。
 次に、咲洲コスモスクエア地区については、研究開発拠点の形成等の実現に向け、用地取得費の30%、最大10億円を助成する制度を創設いたします。また、OTS線等の鉄道料金の値下げについては、まちづくりを促進するための重要な施策と位置づけ、抜本的な検討を指示したところであります。今後は、国等とも調整しながら、早期に実施できるよう努力してまいります。
 さらに、内外の投資を呼び込むため、積極的にシティープロモーションを展開するとともに、市内全域を対象として重点産業の立地促進を図るため、建物建設費等の5%、最大3億円を助成する制度を創設いたします。また、御指摘の鶴橋地区において再開発の動きが具体化しつつありますが、民間の知恵と工夫を最大限活用することは、大阪の活力あるまちづくりにとって大変重要であります。厳しい財政状況ではありますが、鶴橋地区などの民間再開発について、大阪市としてもできる限りの支援をしてまいります。
 地下鉄網の整備についてでございますが、地下鉄を初めとする鉄道は、まちづくりを支える重要な都市基盤施設であり、人の動きの活発化によって経済の活性化を促すことから、都市の再生を図り、都市圏全体の発展にも大きな役割を担うと考えております。そのため、平成元年に出された運輸政策審議会の答申路線の整備を進めておりますが、今後、大阪市が西日本の中枢都市として持続的に発展していくためには、鉄道網の中心となる地下鉄ネットワークの拡充が極めて重要であることから、地下鉄第8号線の整備に取り組んでいるところでございます。第8号線につきましては、現在、平成18年度の開業を目指して井高野~今里間の建設工事を進めておりますが、残る今里~湯里六丁目間の整備についても喫緊の課題であると考えており、国土交通省などの関係先へ強く要望するとともに、精力的に協議を進め、できるだけ早く整備に着手できるよう全市を挙げて取り組んでまいりたいと考えております。
 新産業の創造と大阪経済の活性化についてでございますが、大阪経済を牽引する新たな産業の創造が都市の再生には不可欠であります。ロボット産業については、産業創造館を中心とする産学官のネットワークを活用し、新技術や新製品の開発に向けた取り組みを進めてまいります。新年度には、交流しやすく利便性が高いことから、研究者や企業が強く望んでいる都心に共同研究開発の場を提供し、ATRなど最先端の研究機関や関西の大学と連携を図り、次世代ロボットの実用化プロジェクトを強力に推進いたします。さらに、大阪をロボット研究開発の先進都市として内外にアピールしながら、大阪駅北地区における国際的な研究開発拠点の形成を目指して取り組んでまいります。
 IT分野では、情報家電企業や通信事業者のほか、中小のIT関連企業が多数存在する大阪のポテンシャルを生かし、これまでも中小企業やベンチャー企業の事業化支援に取り組んでおります。ユビキタスネットワークは、関連産業の活性化はもとより、都市活動や暮らしの支援、都市魅力の向上など、多方面への効果が期待できます。御堂筋周辺の実証実験を大いにPRし、中小企業の参画を進めるとともに、市民参加など普及促進に努め、先進ITを活用した将来の都市のあり方を示唆するような成果を上げてまいります。
 中小企業の事業活動に欠かせない資金面の支援については、小企業事業者向けの無担保・無保証人型融資の要件を緩和するほか、経営支援特別融資を継続するなど、金融セーフティーネット対策を強化いたします。また、今年度、政令市として初めて取り組んだローン担保証券融資(CLO)を、新年度は神戸市や横浜市との連携による広域型CLOとして実施するとともに、証券を市民にも販売し、市内企業の資金調達を市民が支える仕組みをつくるなど、中小企業の資金調達の多様化と経営安定を支える各種融資制度の充実に取り組んでまいります。今後とも、本市では市民の参画を得ながら産学連携を進め、新たな市場の創出と産業の創造を図り、大阪経済の活性化に努めてまいります。
 雇用施策についてでございますが、大阪市雇用施策推進本部のもと、雇用創出に向けた取り組みの一層の強化を図り、「新産業の創造、育成」や「中小企業等の経営革新・競争力強化」、企業誘致と都市開発の促進」といった経済の活性化とともに、「観光集客機能の強化」、「保健・福祉施策の充実」の5つを柱として、雇用創出につながるさまざまな分野の施策を総合的に推進し、平成16年度から19年度において大阪市内で「5万人の雇用創出」の受け皿づくりに取り組むことにより、大阪の雇用失業情勢の改善に努めてまいります。この進捗管理については雇用施策推進本部において行い、毎年、結果を公表してまいります。
 また、雇用の安定に向け、市民の就職を支援するため、アピオ大阪で労働・職業相談を実施しておりますが、本年秋以降、市内4カ所に職業相談窓口を拡充し、市民に身近な場所できめ細かな相談を行います。さらに、職業相談をより効果的に実施するため、あわせて行う無料職業紹介事業については、極めて高い本市の失業率の改善を図るため、独自の求人開拓に努めるとともに、ハローワークとの連携を密にし、大阪労働局とも十分協議を行い、本年秋をめどに実施してまいります。
 野宿生活者対策についてでございますが、野宿生活者に関する問題の解決を図るため、16年度から20年度の5年間を期間とする実施計画を策定中でございます。野宿生活者の多くは、就労する意欲はあるものの仕事がなく、失業状態にあります。そのため、就労自立を目的とする自立支援センターの定員枠を、16年度のできるだけ早期に大幅に拡充してまいります。自立支援センターでは、生活習慣の改善、心身の回復とともに、一人一人のライフヒストリーに応じた自立支援策を進めるため、軽易な作業を通して自立意欲を高めるための新たな事業や職業訓練なども行い、就労支援の充実を図ってまいります。さらに、就労した人が職場に定着し、再び野宿に戻らないよう、アフターケアも実施いたしてまいります。また、就労へつなぐ実効性のある仕組みづくりとして、16年度の早期に国、府、経済団体、労働団体等と共同して支援協議会を設置し、事業主への啓発、個々の職業能力に応じた職域の開拓など、雇用の促進を図ります。
 一方、市内の道路・公園等の公共施設の適正な利用が阻害されるなど、地域における生活環境への影響も見られることから、野宿生活者の自立の支援に関する施策の推進を図りながら、道路・公園等の本来持っている機能を早期に回復し、地域住民の方々が円滑に利用できるよう、今後、なお一層の取り組みを進めてまいります。自立支援センターの規模・機能を拡充しながら総合的な対策を推進し、野宿生活者問題の抜本的解決と道路・公園等の公共施設の利用の適正化に向け、野宿生活者対策推進本部の本部長である私のリーダーシップのもと、全力で取り組み、在任期間中に野宿生活者問題の解決にめどをつけてまいります。
 同和行政についてでございますが、特別措置の円滑な収束のため経過措置を講じた事業については、その期限を厳格に遵守し、確実な事業収束を図ってまいります。
 共同浴場については、自主運営の確立に向けて、未整備となっている浴場の整備を16年度に完了するとともに、助成金についても16年度で終了いたします。また、芦原病院については、17年度には貸付金の発生をなくすという目標の達成並びに運営主体や助成のあり方など、自立に向けた方策が示せるよう取り組んでまいります。
 未利用地の有効活用については、活用方針を取りまとめており、16年度中をめどに、個々の用地の活用方針を策定してまいります。住宅入居については、優先入居を改め、ふれあい人権住宅として公募しておりますが、今後、できるだけ早く一般住宅と同様の募集となるよう最大限の努力を行ってまいります。
 青少年会館については、指定管理者制度の導入を図ることとし、条例の改正を行ったところであり、今後とも、その趣旨を踏まえ、効率的・効果的な管理運営に努めるとともに、人権文化センターについても、同制度の導入に向け、より適正かつ効率的な管理運営に努めてまいります。
 今後とも、附帯決議を初め市会での論議を十分踏まえ、所期の計画等の的確な実行に努め、一層の改善に取り組むとともに、すべての人の人権が尊重される社会の実現を目指し、総合的な人権行政の推進に努めてまいります。
 新しい総合計画についてでございますが、基本構想を、市民や企業に対する「ともに大阪のまちをよりよくしていこう」というメッセージとして、多くの人にわかりやすく伝えるためには、多様な要素から成る大阪の将来像を端的に示すキャッチフレーズが重要な意味を持ちます。市民もその選定にかかわることは、基本構想を幅広く共感されるものにする上で大いに意義のあることであり、広く知恵を求めていきたいと存じます。
 また、地域別計画は、今後、各区を中心に策定を進めますが、地域の幅広い層の参画を得ることによって広く共有されるものとし、市民の多様なネットワークが形成され、活発な活動が展開される契機にしたいと考えております。
 新しい都市経営システムについてでございますが、このシステムの構築は、大阪市財政が非常事態にあり、また第三セクターの経営問題など、市政を揺るがす大きな問題が生じている状況において、社会経済環境の変化を踏まえ、持続可能な市政運営を進めるためには、まずどういった点から市政を改革すべきかを私なりに考えてきた上で得た一つの結論であります。
 新たに設置する都市経営会議におきましては、部局の枠組みを超えた全市的課題に迅速に対応するため、私が主体的に判断し、市政の基本方針や重要施策を戦略的に決定する必要があると考えております。そのために、担当局の提起を待つことなく、みずから課題を設定して、その課題について集約された情報のもと、徹底的に議論し、早い段階で大枠の方向性と責任を持って執行できる体制を明確にしてまいります。また、行政の独善的な判断とならないよう、外部の有識者や専門家で構成する諮問会議から意見もいただき、意思決定に当たっての客観性も高めてまいります。加えて、若手職員によるプロジェクトチームを設置し、広く施策にかかわる意見を求めてまいります。これらを補佐する経営企画部門におきましては、私の戦略スタッフとして経営企画監を配置し、都市経営会議で決定された事項について、各担当セクションに対する指示・調整、進行管理を行わせ、実効性を確保してまいります。以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

大西史朗教育長

 教育問題についてお答え申し上げます。
 習熟度別授業は、小学校5・6年生で算数科・国語科を、中学校2・3年生で数学科・国語科・英語科での実施を考えております。実施に当たりましては、子供の学力実態等に応じ、実施時期、指導内容・方法、指導体制、グループ分けを固定化しないなど、十分配慮してまいります。また、各学校で取り組み内容の検証・改善などを行いながら、個に応じた指導の充実を図っていくことが望ましいと考えております。教育委員会といたしましては、習熟度別授業の実施に向けて、保護者への周知や教育研究会との連携、また各学校に対する情報・資料の提供や指導・助言などの支援を一層充実してまいります。習熟度別授業も、平素の授業、学級経営が土台であり、教員が子供一人一人に学ぶ喜びや達成感を味わわせる授業を行うことが大切でございます。
 また、教員の資質向上につきましては、教育委員会といたしましても積極的に取り組まなければならない課題と考えており、従来から教員一人一人の教科指導力などの向上を図るための研修を実施してきたところでございます。一方、教職員の資質向上方策検討委員会から、昨年8月には、指導力不足等教員への対応方策を取りまとめた中間報告を、また本年2月には、教職員全般の資質向上方策を取りまとめた最終報告を提出いただいております。教育委員会といたしましては、これまで以上に教員の資質向上を図るための実践的な研修などを実施してまいりますとともに、昨年12月に立ち上げました指導力不足等教員への対応システムに基づき、校園長からの申請を受け、指導力不足等教員に対する校外研修等を実施してまいります。なお、相当期間研修を行っても改善されない場合は、免職も含め分限処分などの厳しい対応を行ってまいります。
 また、現在、教職員の評価・育成システムを試行実施しており、校園長が行う評価の活用につきましては、国の公務員制度改革の動向なども注視しながら、積極的に検討を進めてまいりたいと考えております。さらに、評価は、客観的な基準に基づき適正かつ公正に行われ、評価される教員にとって信頼と納得がなければなりません。したがいまして、管理職に対する評価者研修を実施し、評価の重要性を改めて認識させるとともに、評価能力の向上を図ってまいりたいと考えております。以上でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。